メロディーは景色を描き、物語を紡ぎます。歌詞には物語の歴史や背景、あなたに届けたいメッセージが詰まっています。頑張りすぎて何も考えない時間が必要なあなたに、傷ついた心を癒したいあなたに、気持ちを一度リセットさせてくれる楽曲と形式を紹介します。
浄化を促す泣ける曲、あなたの心の傷を癒すメロディーベスト5
涙が溢れる時、すぐに理由は見つかりません。誰かの言葉があなたを励まし、緊張を解いてくれる時、美しい歌声や音色があなたを包み、心の琴線に触れる時、あなたの心と体は感動で満たされ、感情は解放されます。
1.Ave Maria
アヴェ・マリアと聴いて、あなたはどの曲が思い浮かびますか?
有名なアヴェ・マリアは
・バッハ / グノーのアヴェ・マリア
・シューベルトのアヴェ・マリア
・カッチーニのアヴェ・マリア
があり、これらは三大アヴェ・マリアと呼ばれています。
“Ave Maria”とは「おめでとうございます、マリア様」という意味です。キリスト教における聖母マリアは、人類の父なる神の子・イエスを産んだ偉大な存在であり、象徴です。
アヴェ・マリアは聖母マリアへの祝福や祈りを歌った楽曲であり、どの曲も美しいメロディーが紡がれています。
・フランス人作曲家のシャルル・フランソワ・グノーは、バッハ作曲の『平均律クラヴィーア曲集』第1巻の『前奏曲 第1番 ハ長調』に、主旋律とラテン語の聖句の歌詞を加えました。
グノーがバッハをサンプリングしたということもあり、題名には必ず両作曲者の名前が並びます。川に流れる水のような落ち着いた調べの中に、美しい音色が心を穏やかにしてくれます。
・シューベルト作曲の『エレンの歌第3番』が本当の題名で、本来は宗教曲ではありません。
シューベルトがスコットランドの叙事詩『湖上の美人』に曲をつけました。登場人物であるエレンが、聖母マリアに助けを求めて祈る場面を歌にしたものといわれています。
あまりに美しい主旋律と伴奏が、聖母マリアに祈りを捧げている姿を思い起こさせ、アヴェ・マリアの名前を与えられていることに納得できます。
・カッチーニのアヴェ・マリアは、実際には旧ソ連音楽家ウラディーミル・ヴァヴィロフが作曲したのですが、神秘性を持たせるために作者不詳で発表したそうです。
しかし彼の没後、この曲がレコーディングあれる際にカッチーニ作曲と明記され、世に広まったとされています。バロック時代の音楽家のジュリオ・カッチーニの作品としては、“Ave Maria”の歌詞を繰り返す様式は当てはまらないのだそうです。
しかしこの曲が持つ神聖な雰囲気が、多くの人の心を掴んで離さないことは紛れもない事実で、あなたも何度も耳にしたことがあると思います。
他にも多数同じ題名の楽曲が存在するそうですが、アヴェ・マリアに共通するものといえば、神聖さや純粋無垢な雰囲気といえます。
癒されたい時や優しさに包まれたい時、聖母マリアのために捧げられた曲たちは、きっとあなたの心に光を射し込んでくれることと思います。
2.グレゴリオ聖歌
グレゴリオ聖歌とは、ローマ・カトリック教会で歌われる男声による単旋律聖歌です。澄んだ男声ユニゾンによる美しい旋律が、落ち着きを与えてくれます。
ユニゾンとは、1つの音や旋律を同じオクターブや異なるオクターブで歌唱することです。音楽的にいえば複数の音のピッチが少しでもズレると、違和感を覚えます。
グレゴリオ聖歌は教会で歌われる歌ですので、宗教儀礼の進行とともに歌われます。
しかしグレゴリオ聖歌全体にいえることは、単旋律の調べをもたらす穏やかさで、宗教信仰を抜きにただただ美しいのです。癒される楽曲には、「周波数」が関係し注目を集めています。
周波数(ヘルツ)の違いにより期待される効果が変わり、目的に応じて、異なる周波数の楽曲を聴くと良いのだそうです。グレゴリオ聖歌では「ソルフェージュ音階」が使われ、「ソルフェジオ周波数」と呼ばれる周波数が癒しを与えてくれます。
宗教信仰の魅力的な点は、「祈る」ことにあるのではないでしょうか。世界の平和や、神さまへの祈り、生きることへの祈り、そういった愛のこもった歌は、寝れない時や落ち着きたい時、お祈りをする時に聴くことで心が穏やかにしてくれることでしょう。
3.The Rose
日本でも大変人気がある「The Rose」は、アメリカ映画の主題歌でありヒット曲です。歌手のベット・ミドラーが主演し歌った曲で、1980年の発売以来、多くのアーティストが歌い続けています。
歌詞は、厳しい冬を乗り越えた先に実りがあると、人生をバラに喩えています。この曲を聴くと、美しくもダイナミックなメロディーがクライマックスへ向けて高まり、様々な感情が沸き起こります。
日本では連続ドラマ『アルジャーノンに花束を』の主題歌に起用され、またスタジオジブリ映画「『おもひでぽろぽろ」にて、日本語訳で歌われました。全世界で多くの歌手がカバーしていますし、同曲の様々な歌手のカバーを集めたコンピレーションアルバムも発売されています。
最後の一節の前にこんな歌詞があります。
“And you think that love is only for the lucky and the strong”
–あなたは、幸せは幸運で強い人にしか訪れないと、思っているけれど–
ポエティックな歌詞に、自然な流れで現実的に共感できる部分があり、メロディーも悔しさや哀しみを力強く表現しています。この曲の歌詞とメロディーが持つ普遍的な味わいと感動は、時にあなたに涙を呼び起こすのではないでしょうか。
4.I dreamed a dream
1980年に開演が始まったミュージカル『レ・ミゼラブル』の劇中歌で、長い間愛されてきた一曲です。2012年公開の映画『レ・ミゼラブル』では、劇中で女優のアナ・ハサウェイが歌い、高く評価されました。
また、歌手のスーザン・ボイルがイギリスのオーディション番組『Birtain’s Got Talent』に出場した際に歌い、世界中に評価されたことも記憶に新しいですね。日本では『夢やぶれて』の邦題で親しみがあるのではないでしょうか。
かつて夢を抱き、一度は幸せを掴んだけれど、今となっては真逆の現実を生きている。この曲は残酷な現実が、心が描いた夢に生きることを許さなかった、悲痛な叫びを描いています。
ある人にとっては求めなくても用意されているものが、ある人にとっては願っても手に入れられないことがあります。
それが平穏な生活であったり、心から愛する人と結ばれることで、子を授かることであったりと、人生のシナリオは実に様々です。一言に人を励ます、勇気づける、癒すといっても、その人の背景や歴史を知らないことには何の力にもなりません。
同曲が持つインパクトと美しさは、ドラマチックでありながら、悲哀に満ちています。時としてあなたを癒す要素は、現実に平伏して尚、生きようとする健気な姿かもしれません。
5.You raise me up
2006年の冬季オリンピックにて、フィギュアスケートの荒川静香選手がエキシビションの演技に同曲を使用しました。日本では「ケルティック・ウーマン」がカバーした同曲が大変有名になりました。
この曲のオリジナルはアイルランド・ノルウェーのミュージシャン「シークレット・ガーデン」だということはあまり知られていません。シークレット・ガーデンは作曲家でありピアニストのロルフ・ラヴランドとヴァイオリニストのフィンヌーラ・シェリーのデュオです。
彼らは多くのインストゥメンタルの楽曲を発表していて、はじめはこの曲もインストゥメンタルだったそうです。同曲はシークレット・ガーデンが歌手を招き、作詞家に提供してもらい完成したそうです。
アイルランド民謡のエッセンスを含む美しい旋律に、心温まる歌詞が乗り、世界中の人々を励まし続けます。人の心が輝くのはもしかしたら、挫折や失敗から立ち直り、再び歩き出す時かもしれません。
「You Raise Me Up」を和訳すると、あなたは私を立ち上がらせてくれる、ですが、「あなた」が神さまであったり、両親であったり、心を許せる友人に当てはめることができます。
またこの曲自体が「あなた」であっても違和感はありません。国民性や土地、宗教観や思想の影響により受け取り方は様々だと思います。この曲から読み取れることは「感謝の心」ではないでしょうか。
あなたがいてくれたから、今の私がある。どんな人にも味方や憧れ、愛する人がいて、人生の苦しい時に助けてもらったなら、その恩は一生忘れません。あなたの心にも感謝できる人がいてくれるのではないでしょうか。
インターネットやメディアが世界中の文化を配信してくれるおかげで、私たちは自分に合った楽曲に出会いやすくなりました。あなたの心が求める物語と旋律が、きっと見つかります。
言葉や時代を超えて、あなたを感動させ、心を揺さぶる曲が待っているのではないかと思います。
あなたの心の傷を断捨断するメロディーベスト5
1. Ave Maria
2. グレゴリオ聖歌
3. The Rose
4. I dreamed a dream
5. You Raise Me Up