一般的にはお子さんだけの障害と思われがちなADHD。でも、大人になってもその症状は子供のケースと大きな差はないといわれています。今回はその特徴や克服手段の一例などをご紹介しました。
なお、この記事でご紹介するのは、社会生活での人間関係を円滑にするための手段の一例です。障害を指摘して治療を受けさせるようなことを目的としてはおりません。
集中できない、他人の話が聞けない、大人のADHDを克服し幸せに生きる7つのステップ
1.「ADHD」とは?
まず、ADHDとは「注意欠陥・多動性障害」と呼ばれるものです。その名が示すように不注意で落ち着きがなく、行動に衝動性が見られるのが特徴です。
ADHDは、6~7歳ごろまでにその症状や特性が見られ、それらは生涯にわたって続くといわれています。誰でもADHDと間違うような特徴を持っているものですが、ADHDと診断されるのは日常生活に支障をきたすような症状が現れた場合です。
病気というよりは、脳の発達のアンバランスさの表れといったほうがよいかもしれません。
具体的な症状などには、
・忘れ物が多い
・気が移りやすくて集中してひとつのことをやるのが苦手
・落ち着きがなくじっとしているのが苦手
・思い立ったらその通りにすぐ動きたくなる
・順番待ちが異常なほど苦手
などが挙げられます。
これらはお子さんのうちの症状によくみられるとされるものですが、大人になっても著しい症状となって現れ、社会生活に支障が出てしまうのであれば、もしかするとADHDかもしれません。
2.大人のADHDを克服する7つのステップ
では、大人のADHDとされる主な症状とその克服手段の一例をご紹介します。
2-1集中できない・集中力が続かない
この症状はADHDの大きな特徴とされています。
集中できないと自覚した時は、まず自分の状態を客観視してみましょう。
【チェック】
①体調や気分に問題はないのに集中できない
②心身ともに疲れきっていて集中できない
【克服手段の一例】
①の場合:自分の身の周りにある集中力を奪うものを減らしてみる。具体的にはテレビなどを消す、なくす。うるさいと感じる音を消す。目につくと邪魔になるようなものを片づける。
②の場合:なによりも「休むこと」を最優先する。自分の普段の生活を見直して優先順位の低いことはしないなど、休養の時間を増やす。休日には睡眠時間を多く取る。
【ポイント】
①の状態で、自分の集中力を散漫にさせる誘惑の規模が大きい場合には「〇〇したいなら、切りのよい〇〇まで仕事をする」といったように具体的に区切りを設けるとよいでしょう。タイマーやアラームをセットして時間を区切ることはかなり有効です。続けることで自然と集中力も身に着き、集中できない状態を克服できるでしょう。
2-2片づけることができない
次に挙げるのは、「片づけられない」症状。ADHDの症状のなかでもとくに多いといわれています。子供の頃にはたとえ散らかしても身の周りの大人(とくに親など)がその後始末をしてくれた、ということがあったかもしれませんが、大人になるとそうはいきません。
大人になると自分のことだけやっていればよい、というわけにはいかず職場や家庭で担うべきことが増えるからです。
【克服手段の一例】
では、片づけられるようになるにはどうしたらよいのでしょうか。まず、「自分の生活において重要なものとそうでないものを仕分ける」意識を身につけましょう。言いかえれば、「その時々に必要なものだけを取りだす」習慣をつけるともいえるでしょう。
そしてものを片づける具体的な方法には、
・それぞれのものをしまう場所を固定する
・元あった場所にものを戻す
・収納ボックスなどに入っているもののラベリングをしておく
などを実践してみましょう。
【ポイント】
きちんと片づけられたあとは、「散らかる速さ」と「片づける速さ」を同じくすることを心がけましょう。
必要なものだけ出し、使ったらすぐに片づけてしまうということですね。そうすると散らかることがなくきれいに片づいた状態が保てます。
「あとで片づければいい」と思った時が「片づけるタイミング」と意識しましょう。
2-3せっかちでイライラしやすい
ADHDといわれている人は衝動的で気持ちの抑制が苦手とされています。
自分がせっかちと感じるかは、「周りの人がみんな」ぐずぐずしているように見えるかどうかです。自分以外の他人がすべてペースが遅いとイライラを感じてしまうのであれば、せっかちなのかもしれません。
【克服手段の一例】
他人には他人のペースがある、と諦めることが効果的です。自分が急ぎ過ぎている場合も考えられますので、ペースダウンするのも一つの方法でしょう。また、周囲に対してイライラしかけたらその場をいったん離れるのも有効です。
【ポイント】
他人は自分の思ったとおりに動いてくれるわけではありません。自分にはどうにもできない相手に対しムダにイライラするのは、自分を疲れさせてしまいます。また、イライラを向けられた相手も気分が悪くなったりイヤな思いをさせられたりすることになります。
人間関係のこじれを招かないためにも、自分が思っている以上に「ゆっくり」動くことを心がけるとよいでしょう。
2-4時間の感覚に疎く、時間の管理が苦手
ADHDの人は時間の感覚に疎いことが特徴といわれます。集中力が続かない症状と対極をいく症状ですが、そのためになにかにのめり込むように夢中になり素晴らしい集中力を発揮することがあります。
【克服手段の一例】
なにかに夢中になりすぎる以外には、ぼんやりしていて「もうこんな時間か」ということにもなりがちなので、タイマーやアラームで時間を細かく区切るようにするとよいでしょう。「TODOリスト」などを作り、その日のスケジュールを時間ごとにあらかじめ決めておくのも一つの手段です。
2-5遅刻しやすい
「時間の感覚に疎い」症状と重なりますが、他人との待ち合わせや職場の始業時刻に遅れてしまうことも挙げられます。もちろん本人に悪気はないのですが、こういうことが起こるのは所要時間の見通しが甘いというのが要因でしょう。
そのため、どこかへ出かける・準備にかかる時間はどのくらいなのかなどきちんと確認するようにしましょう。
2-6うっかりしたミスを多発する
ADHDの人は注意力が散漫といわれるために、そうでない人と比べてミスが多いのも特徴。しかもそのミスは「ついうっかり」から起こることだといっても、その頻度が高すぎるのは問題かもしれません。
周りから頼りにならない人などのレッテルを貼られ、自分の自信を失うことにもなりかねません。
【克服手段の一例】
毎日おこなう仕事や家事、作業などをルーティン化することは有効な方法です。あらかじめ決めたやり方ややりやすい方法を固定して、決まった時間にこなすことをくり返すわけです。そしてそれを習慣化しましょう。
「時間の感覚に疎い」症状でも挙げましたが、「TODOリスト」を作るのも効果的。こなしたことをチェックしていき、やり忘れや漏れを防ぎましょう。
また、やることをこまめにメモ書きしておく、付箋に用件を書いて目につくところに貼っておくなどの工夫もよいでしょう。
【ポイント】
速さと正確さではどちらを優先させるかという点では、正確さを優先させるほうがよいでしょう。うっかりミスの頻度を下げるためには、速さはあまり重要ではありません。
むしろ速くこなそうと焦ってしまうためにミスを多発させてしまっていると考えられるからです。行動が早くてミスが多いよりも、遅くても正確さに重点を置きましょう。
2-7落ち込みやすく、くよくよしやすい
ADHDの人は、ミスした後に落ち込みやすく一人で思い悩む傾向が強いといわれます。それが取るに足らないミスだったとしても重く受け止めてしまい、それを引きずりやすくさらにミスを起こす引き金になる、という悪循環に陥ることもあるようです。
【克服手段の一例】
自分の思った通りに事が進まなかった場合、それを重く受け止めることをやめてみましょう。いくら気をつけていてもミスを完全にゼロにすることは不可能です。ミスしたことに必要以上にこだわらず、どうしてそうなったのかの原因をふり返ることが大切。
そしてミスした場合の記録をとっておき、対処した手段や方法を一緒に書いておくとよいでしょう。これを定期的に見直し、同じことをくり返さない工夫をしましょう。
3.まとめ
仕事ができない、だらしないなどの短所ばかりに目が行ってしまいがちな大人のADHDですが、それにばかり焦点を当ててしまうと長所を見逃してしまうことになります。
ADHDの人のすぐれている側面には、
・集中力を発揮すると何時間でも没頭できる
・独特の感性を発揮する
・ひらめく頻度が高い、もしくは突如として起こる
・行動力にすぐれている
・新しいものや物珍しいものごとを敏感に察知する
などが見られます。
本人の関心があることには人並み外れてのめり込み、行動力や想像力を活かせるわけです。
著名人や芸能人では、
・スティーブ・ジョブズ(アスペルガーとも)
・三木谷浩史(自著で告白)
・SEKAI NO OWARIボーカルのfukase(雑誌の取材にて告白)
・武田双雲(ブログにてその疑いありとも)
などの人たちがADHDであることを公表しています。
成功しているこれらの人たちに共通しているのは、「得意なことを活かす仕事をしている」ことといえるでしょう。
大人のADHDを克服し幸せに生きる7つのステップ まとめ
「苦手なことを避けて得意なことを仕事にする」 これは、一般人でも十分に真似できる点でしょう。「苦手は克服しないといけない」と考える風潮にあるのが日本ですが、得意なことを徹底的に追及するという考え方をしてみてはいかがでしょうか。
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