暴走する現実創造を止めようとする創世紀のアイコン達。いつしか、その暴走は地球を中心として全宇宙を大きく歪めていくことになりました。アイコン達はこの問題に対応するために、暴走を浄化することができるクローンを生み出し、そのクローンと共に地球へと降り立ちましたが、地球特有の条件である「死」に翻弄されることになります。それがいつの間にか救世主となるはずのクローンをさらに苦しめ、現代の世界の問題へと至るのです。
本来の目的を忘れた派遣団達・・・
裏切りの始まり
ヒロキ:さて・・・前回は、この世界の創造に携わったアイコン達だったけど、「現実創造」が自分たちの手を離れて暴走してしまい、その舞台が地球へと移り、地球を中心として全宇宙を歪めるようになったと・・・。
グスタフ:そう、大体そんな感じだね。
ヒロキ:そして、その歪みの中心点となった地球を内側から癒すために、アイコン達の一部が派遣団として地球に送り込まれ、その中には歪みに対応できる能力を持ったクローンもいた・・・ということだったよね?
グスタフ:そうだね。
ヒロキ:でも、その派遣団達にとって誤算だったのは、地球特有の条件として「死」があることだった。「死」によって本当の存在が失われることはないけれど、輪廻転生してしまうと前世のほとんどの記憶が失われてしまう・・・
グスタフ:そう、その通り。結果として、彼らは地球にやってきた本来の理由をほとんど忘れてしまった・・・
ヒロキ:でも、彼らの中には「自分達は派遣団として仲間であった」というデーターが残っているので、輪廻転生しても、その派遣団の仲間達と近いところに生まれ出て、そして関わり合うことになる。
グスタフ:そうだね。
ヒロキ:しかし、派遣団は輪廻転生によって記憶をほとんど失ってしまっており、地球のエゴの波に揉まれているうちに、本来ならば自分たちの希望の星となるべきクローンを私利私欲のために利用するようになってしまった・・・ってことだったよね?
グスタフ:そう。
ヒロキ:具体的にどのようなことになったのか、教えてくれるかな?
グスタフ:地球に降りてきた派遣団達は色々なことを経験したけれど、最初の大きなターニングポイントはメソポタミア文明時代だったんだ。
ヒロキ:メソポタミア文明の頃と言えば・・・かなり多くの国が現れては消えてを繰り返した時代だよね。
グスタフ:そうだね。その中でも派遣団達の運命に影響を与えたのは第3ラガシュ王朝の頃。
グスタフ:当時のラガシュ王朝では戦争、そしてクーデターや政争により、支配者の交代が繰り返された。そして、数百年に渡り栄華と衰退を繰り返した後、末期のラガシュ王朝時代に現れたのがウル・バウという人物だった。
ヒロキ:ウル・バウ・・・
グスタフ:その時、ラガシュは弱体化し、アッカド帝国によって支配されていた。しかし、そのアッカド帝国がグティ人という民族に侵略されて弱体化した時、ウル・バウはその混乱に乗じてラガシュの王となったんだ。
ヒロキ:なるほど・・・
グスタフ:ウル・バウは、器用に立ち回ることができる人物だったと考えていい。自分たちを支配していたアッカド帝国を滅ぼしてくれたグティ人に対しては「忠誠心」とも言えるような友好的な態度を取りながら、うまくラガシュ王朝を治めていった。
ヒロキ:なるほど・・・
グスタフ:そのウル・バウの手腕のおかげで、絶えず戦乱に巻き込まれていたラガシュ王朝は、ウル・バウが治めた第3期において平安な状態を迎えることになる。
ヒロキ:まあ、優れた政治手腕だよね。
グスタフ:そのような優れたウル・バウの外交手腕の一つが、「自分の娘を嫁がせること」だったんだ。他の自治体の長に自分の娘を嫁がせることによって友好関係を結び、安定した外交関係を築いていた。
ヒロキ:なるほど・・・
グスタフ:さらにウル・バウは自分の後継者たる「王」にも自分の娘を嫁がせた。もっとも有名なものが「グデア王」だ。そしてその後、3人の人物が王を継いでおり、そのいずれもがウル・バウの娘と結婚している。
ヒロキ:自分の後継ぎを義理の息子にしたんだ・・・
グスタフ:その通り。そしてその3人の王の最後の男が「ナンマ・ハニ」という人物だった。この人物が第3ラガシュ王朝最後の王だ。
ヒロキ:最後・・・ということは、ナンマ・ハニの代で王朝は滅んだの?
グスタフ:滅んだ。というより、独立を失い、衰退していった。ただ、その過程はあなたの世界の歴史的な記録とはかなり異なっている。
ヒロキ:え? どういうこと?
グスタフ:あなたの世界での歴史的な記述では「ウル・バウは死後、王の立場を義理の息子達に譲った」となっているようだが、それは違う。ウル・バウは自分の王朝が末期状態にあることが既にわかっており、敵国に滅ぼされることがわかった上で、3人の男達に王を継がせたんだ。
ヒロキ:ええ!?!?
グスタフ:3人も王が変わった理由はそこなんだ。グデア王の時代はまだ王朝は安定していたけれど、それ以降はみんな「王を継いでしまうと、自分も国もろとも滅ぼされてしまう」ということがわかっていた。
ヒロキ:ならば・・・なぜ、最後の王であるナンマ・ハニは王になったのだろう?自分も滅ぼされることがわかってい他のに・・・
グスタフ:ウル・バウは本当に策士だった。彼は敵国と既に密約を交わしており、自分の安全を確保してもらうことを交換条件として、王であるナンマ・ハニもろとも敵国のウル第3王朝に自国を売り払ってしまったんだ。
ヒロキ:ええ?!?!そんなことを・・・
グスタフ:そしてウル・バウはさらに、敵国のスパイや自分の腹心の部下などでナンマ・ハニの周辺を固め、ナンマ・ハニが自由に動けないように、王を継がざるを得ない状態へと持っていった。
ヒロキ:なんということを・・・でも、いくらなんでも、ナンマ・ハニもそんなことわかっていただろうし、逃げようがあったのでは・・・
グスタフ:そこでウル・バウ達が使ったのが「呪術」なんだ。メソポタミア時代においては、スピリチュアルな行為は政治と密接に結びついており、極めて正当であり、効果がある手段として認められていた。そして、当時の世界では今のように科学優勢ではなく、呪術は実際に強力に作用した。
グスタフ:ウル・バウは実際の人間関係などの工作だけでなく、自分の複数の部下にナンマ・ハニに対して呪術をかけさせ、ナンマ・ハニが王座を引き継がざるを得ないようにしたんだ。
ヒロキ:用意周到だね・・・
グスタフ:実は、このナンマ・ハニが地球への派遣団に加わっていたクローンであり、ウル・バウもまたその派遣団の一員だった。
ヒロキ:えええええ!!!! ということは・・・
グスタフ:そう、派遣団の一人が、本来であれば自分たちの目的を果たすためになくてはならない存在だったクローンを、私利私欲のためにハメたことになる。これも「輪廻転生」で記憶がほとんどなくなってしまったからなんだ。
ヒロキ:そんな弊害が出たんだ・・・
グスタフ:ナンマ・ハニはスピリチュアル的な能力が優れた神官だった。そこにウル・バウが目をつけて王に抜擢したのだけれど、それは「抜擢するための建前」であって、結果としてナンマ・ハニを呪術まみれにして、敵国へと売り払ったことになる。
グスタフ:もちろん、ナンマ・ハニも自分の状況がよくわかっていた。しかし、周囲をウル・バウの腹心の部下達に取り囲まれ、呪術まみれにされては多勢に無勢でどうしようもなかった・・・
ヒロキ:・・・。
グスタフ:結局、ナンマ・ハニは王になってしばらくしてから、敵国であるウル第3王朝の兵士と、自分の部下によって暗殺されることになる。その優れたスピリチュアル能力は敵国の指導者であるウル・ナンムも警戒しており、ナンマ・ハニは生かしてはおけないと判断したようだ。
ヒロキ:今、ウィキペディアで検索すると、そのウル・ナンムという人物はハムラビ法典の元になったとされる「ウル・ナンム法典」というものを作った人物らしいね。僕たちの世界では最古の法典らしい。
グスタフ:そうらしいね。いずれにせよ、ウル・ナンムもかなり用心深い人物ではある。
グスタフ:こうしてクローンは地球でのエゴの波に揉まれ、暗殺されたのだけど、まだ終わりではなかった・・・クローンに降りかかる災いは「呪術まみれの果ての暗殺」だけでは終わらなかったんだ・・・
ヒロキ:なんて過酷な・・・
地球を癒すためにやってきたのに、その地球のエゴの荒波に飲み込まれ、翻弄されるクローン・・・ここからは次回の記事に続きます。
この記事は グスタフの黙示録・第5章 〜メソポタミアの悲劇〜 です
次の記事は グスタフの黙示録・第6章 〜運命を狂わせた呪術〜 です
この記事の前の記事は グスタフの黙示録・第4章 〜輪廻転生に翻弄されるクローン達〜 です。